MENU
グループ紹介(住宅新聞掲載)

奥野工務店×山下竜二建築設計事務所

北海道住宅新聞 2023.11.05 掲載

“3つの家”と“余白の間”を楽しむ

LDKを“みんなの家”、2つの子供部屋を“子供の家”とし、それら3つの家に囲まれた“余白の間”で住まい手はライフスタイルに合った暮らしを楽しむ―。今回紹介する空知・南幌町の『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』基本プランは、住まい手が暮らしの中で主人公になるプランを提案した(株)奥野工務店(札幌市、狩野泰孝社長)と山下竜二建築設計事務所(森町、山下竜二主宰)の『3つの家と余白の間と』。

暮らしの中で住まい手を主人公に

『3つの家と余白の間と』は、“住まう人を主人公に”という山下さんの設計コンセプトをベースに、南幌町の豊かな自然の恵みを最大限生かしつつ、住まう人の個性を引き立てる空間構成を提案した延床面積29.3坪の平屋プラン。
両社は、過去にも南幌町・みどり野きた住まいるヴィレッジで1軒設計・施工を行った実績があり、その時の家づくりを通じてお互い信頼関係も築いていたことから、北方型住宅ZEROのモデルハウスを提案するにあたりグループを結成。奥野工務店の家づくりに欠かせないパッシブ換気と、みどり野ゼロカーボンヴィレッジでモデルハウスの要件となる壁面太陽光発電を前提として山下さんが設計を進め、それを狩野社長が確認していくといった流れでプランを完成させた。「建設費が5千万円を超えると難しいので、4千万円程度に抑えるとともに、ニーズが高まってきていると感じていた平屋で提案しようと考えた」と山下さんは話す。

片流れの落雪屋根とした平屋の外観。大開口を有する南面の外壁の軒先に壁面太陽光発電パネルを設置する

みんなの家と2つの子供の家がある空間構成

間取りは家の中心にLDKを設け、その周囲に多目的に使える空間である“余白の間”や、主寝室、ロフト付きの子供部屋、客間、玄関、水回りを配置。特徴的なのは、LDKを“みんなの家”、2つの子供部屋を“子供の家”とみなし、その3つの家に囲まれるように余白の間を設けた空間構成だ。
建物南側の庭に面する余白の間は、6.8坪の広さで引き違い窓による大開口と大きな棚を備えており、光と風を取り込むことによって季節の移ろいを感じながら、住まい手が趣味や食事、ティータイムなどを自由に楽しめる縁側のような空間。山下さんは「住まい手が見えない状況でプランを作成しなければならなかったので、どんな住まい手でも暮らしを楽しめるようにと余白の間を設けた。家の中にみんなの家(LDK)と2つの子供の家(子供部屋)という3つの家がある形としたのも、余白の間が屋外的な空間にもなるようにと考えてのこと」と、余白の間を設けた意図を語る。
また、余白の間の両サイドに位置する子供の家と、背後に位置するみんなの家は、屋根なりのこう配天井とは別に独立した天井を施工。独立天井は開口を設けており、2つある子供の家はロフトに上がれば開口から顔を出して余白の間を見下ろすことができるなど、秘密基地のような面白さも感じることができる。
このほか、みんなの家は余白の間や主寝室などで囲まれることで屋外からの視線が遮られ、プライバシーを確保しつつゆったりと過ごすことが可能。客間はフロアレベルを他の部屋より80cm高くし、床下空間を収納として利用できるようにしている。

室内には“みんなの家(LDK)”と、2つの“子供の家(子供部屋)”があり、趣味などを楽しむ余白の間を囲んでいる

“みんなの家”となるLDKは、室内の中心に配置。主寝室などの各部屋に囲まれて屋外からの視線が遮られるため、プライバシーを気にせずゆったりと過ごせる

壁面太陽光は外観の統一感や雨水浸入など配慮

建物外観は片流れ屋根とし、余白の間の大開口が真南を向くよう、敷地に対して斜めに配置。雨がかりになる部分は高耐久なガルバリウム鋼板、その他の部分は木板張りで仕上げる。屋根は「雪はそのまま落とすほうが自然だし、地震などの災害時に建物にかかる負担や人への落雪といったリスクを考えても、雪は屋根に載せず落としたほうがいい」(山下さん)との考えから、落雪屋根を採用。敷地内は建物北側を堆雪スペース、南側を庭スペース、東側を菜園スペース、西側を駐車スペースとして、それぞれ役割を持たせた。
みどり野ゼロカーボンヴィレッジのモデルハウスで必須となる壁面太陽光発電は、外観の統一感を損なわないよう、外壁南面から出ている軒の垂直面(鼻隠し部分)に太陽光発電パネルを6枚、合計2.3kW分を設置。設置部分から雨水等が浸入した時のリスクも考慮し、防水層は軒先ではなく、壁面ライン上で確保している。太陽光発電で発電した電気は、主に太陽光発電連動型ヒートポンプ給湯器による昼間の沸き上げに利用して積極的に自家消費する計画だ。
暖房・換気は、パッシブ換気床下暖房システムを採用。狩野社長は「当社の家づくりで大きなセールスポイントであるパッシブ換気は外せなかった」と言い、山下さんとしては今回初めての採用ながら、デザイン的に違和感がないよう、給排気塔や床面スリットの位置・サイズ等を考えたという。
なお、北方型住宅ZEROの適合要件となる脱炭素化対策のポイント数(P)は、太陽光発電(パネル壁面設置・2kW以上)で3P、時間帯選択式ヒートポンプ給湯器で5P、窓の熱貫流率1.2以下かつ日射取得率=η0.3以上で3P、UA値0.28以下で3P、パッシブ換気採用で1P。合計15Pとなり、適合に必用な10Pを上回る。概算工事費は約4300万円。
狩野社長は「暮らしを楽しめることはもちろん、外装仕上げや太陽光発電パネルを設置した軒の防水層など、将来的なメンテナンスの負担軽減にも配慮された設計であることをわかってもらえれば」と話しており、山下さんは「このプランそのままでなければ建てられないということはないので、コンセプトに関心を持って頂けたのであれば、できる限り要望に応えたいので、気軽に問い合わせてほしい」と語っている。

プランのポイントを話す狩野社長(左)と山下さん(右)

お問い合わせ

きた住まいる サポートシステム
住宅建設事業者の方はこちら 住宅建設事業者の方はこちら