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グループ紹介(住宅新聞掲載)

紺野建設×山本亜耕建築設計事務所

北海道住宅新聞 2023.10.15 掲載

タープに見立てた傾斜壁を活かす

建築家と地域工務店のグループが空知・南幌町で提案する北方型住宅ZEROモデルのコミュニティ『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』のプラン集が、先月中旬に行われた「ほっかいどう住宅フェア」で公開された。ここで全11グループが提案した個性豊かな基本プランを1棟ずつ紹介していきたい。
第1回は紺野建設(株)(本社清水町、紺野将社長)と(株)山本亜耕建築設計事務所(札幌市、山本亜耕社長)のグループ・Team KAPS(チーム・キャップス)が提案し、早くもオーナーが決定した「大きなタープに覆われた家」。

壁面太陽光や通り抜け動線・中間領域、日射遮へいに活用

「大きなタープに覆われた家」は、傾斜したソーラーウォールをキャンプでよく見かける“タープ”(日差しや雨を防ぐ布状の屋根)に見立て、その裏側に居住スペースと、屋内外の中間領域となる空間、敷地内を通り抜けることができる動線などを配置した斬新なプランを提案。「太陽光発電パネルを断熱・気密が関係しない部分に設置し、その裏でいろんなアクティビティ(生活行動)を考えながらコンセプトワークを行ったが、その中で招き屋根を現代的に解釈してリファインしても面白いと形にしてみた」と山本社長は言う。
設計上の大きなポイントであるソーラーウォールは、約75°の角度で総2階の建物本体と一体化した板金仕上げの傾斜壁。太陽光発電パネルを2~6kW 設置し、日射を遮る庇としての役割も持たせつつ、裏側にできる空間は室内から屋外へシームレスに移動できる中間領域や、前面道路から緑道に抜けられる通り土間を設けることで、住宅技術と空間・生活の質を両立させるという同ヴィレッジのコンセプトの一つ“クオリティ・ファースト”を具現化している。

太陽光発電パネルを設置した傾斜壁が特徴的な外観のイメージパース

間取りは両社の企画会議でかなり話し合ったと言い、1階は通り土間と中間領域のほか、主寝室と遊びの場を配置。遊びの場は将来的に子供部屋とすることも想定している。また、2台分のカーポートと物置も確保した。
2階はLDKと水回りで構成。時代に合わせて最適な熱源を選べるよう、設備機器の設置スペースを広めに確保し、1階も含めて傾斜壁の両サイドに接する建物本体の外壁はガラスウォールとするなど、採光にも配慮している。
同ヴィレッジで提案する北方型住宅ゼロは、太陽光発電パネルの壁面または壁面・屋根両方への設置が必須であるほか、脱炭素化対策としてポイント数(P)を設定した外皮性能の強化や再生可能エネルギーの活用などの対策を組み合わせ、合計10P以上とする必要があるが、この基本プランでは太陽光発電で3P以上、蓄電池設置で5P、UA値0.28以下で3P、タープ状の傾斜壁を採光面の有効な庇として1P、パッシブ換気採用で1Pと、合計で13P以上になる。

1F平面図・2F平面図

両社のシナジー効果を最大限発揮

紺野建設と山本亜耕建築設計事務所は、6年前に帯広で既存住宅の断熱改修を両社の設計・施工で行ったことを機に信頼関係を築き、今回のグループ・Team KAPSも山本社長から紺野建設・紺野社長にアプローチをかけて結成。「地域工務店の中でも高い設計力を有する紺野建設さんと、グループを組むことで得られるシナジー効果も大きいと思った」(山本社長)。
グループを結成して間もない8月には南幌町の現地に赴き、山本社長と紺野社長らが基本プランのイメージを構想。緑道があって緑も多い区画を前提に、正方形の敷地に対して約55°傾けた建物を想定してプランニングをスタート。ポイントとなったのは、同ヴィレッジの必須要件である壁面太陽光発電パネルと、前面道路から室内を通り抜けて緑道にアクセスする動線の確保などだ。
当初、壁面の太陽光発電パネルは2階南面の窓上に設置し、通り抜け動線は跳ね出した2階テラスの下を通り抜けるプランなどが考えられたが、なかなか納得のいくデザインにならなかったという。
そして検討を重ねるうち、太陽光発電パネルを設置した傾斜壁を造り、その裏側に居住空間を構築することで、同ヴィレッジのコンセプトの一つである「太陽の恵みをみんなの利益に」を表現した案が生まれ、最終的な基本プランの原形となった。
そして基本プラン完成に先駆け、8月中には両社がブログなどSNSで同ヴィレッジの情報を積極的に発信することにより、Team KAPSで北方型住宅ZERO・南幌モデルを建てるオーナーが決定。全11グループの中でいち早くオーナーが決まったことで希望していた区画も確保できた。現在、オーナーから要望の聞き取りを終えた段階で、来年の完成を予定している。

南西立面図

南東立面図

プランの打ち合わせを行う
山本社長(左)と紺野社長(右)

多くの人に受け入れられるよう規格化も視野に

今後は、この基本プランを特定の人だけでなく、多くの人にとって暮らしやすく、建てやすいものとするために、規格化も進めていく意向。基本プランの概算工事費は約4300万円だが、紺野社長は「道の目的は住まいのゼロカーボン化だが、経営戦略の視点で見れば規格化し汎用プランとすることで多くの人が建てやすい価格とし、一定の数を販売できることが必要」と話しており、基本プランベースの規格型住宅商品が登場することも考えられそうだ。

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